「そろそろ社内のファイル共有をクラウド化したい」と考えたとき、悩みやすいのが「結局どれを選べばいいのか」という点です。
OneDrive、Google Drive、Box、Dropboxは、どれもファイルをクラウドへ保存・共有できます。
しかし、容量や料金だけを見て決めると、導入後に、
- 社外共有を管理しづらい
- 退職者のファイル整理に困る
- 必要な監査機能が契約プランに含まれていない
- 既存のMicrosoft 365やGoogle Workspaceと二重管理になる
といった問題が起こることがあります。
この記事では料金ランキングではなく、既存環境・社内共有・社外共有・権限管理・管理負荷を基準に、自社に合う法人向けクラウドストレージの選び方を初心者IT担当向けに解説します。
なお、容量・料金・管理機能などは変更されることがあります。実際に契約するときは、各サービスの公式サイトで最新のプラン内容を確認してください。
OneDrive・Google Drive・Box・Dropboxの違い
まず4サービスの立ち位置を整理します。
| サービス | 主な位置づけ | 検討しやすい会社 |
|---|---|---|
| OneDrive / SharePoint | Microsoft 365と連携するファイル保存・共有基盤 | Word・Excel・TeamsなどMicrosoft製品中心 |
| Google Drive / 共有ドライブ | Google Workspaceと連携するファイル共有・共同編集基盤 | Gmail・Googleドキュメント・スプレッドシート中心 |
| Box | 法人向けコンテンツ管理・共有基盤 | 社外共有や細かなアクセス管理を重視 |
| Dropbox | ファイル同期・共有を中心としたクラウドサービス | デスクトップとの同期やシンプルなファイル共有を重視 |
大きなポイントは、OneDriveとGoogle DriveがそれぞれMicrosoft 365、Google Workspaceという業務基盤の一部であることです。
すでにどちらかを契約している会社では、まず既存サービスに含まれるストレージを使えないか確認するのが自然です。
一方、既存環境だけでは共有・管理要件を満たせない場合に、BoxやDropboxを追加候補として比較します。
OneDrive・SharePointが向く会社
OneDrive・SharePointは、次のような会社で検討しやすい選択肢です。
- Microsoft 365をすでに利用している
- Word・Excel・PowerPointを日常的に使う
- Teamsでチャットや会議を行っている
- Microsoftアカウントを中心に社員を管理している
ここで重要なのが、OneDriveとSharePointの役割を分けて考えることです。
OneDrive for Businessは、基本的に社員個人の作業ファイルを保存する場所です。
一方、SharePointは部署やチーム、プロジェクトなど、複数人で継続的に利用するファイルの保存に向いています。
たとえば、
- 自分が作業中のExcelファイル → OneDrive
- 部署全員が使うマニュアル → SharePoint
- Teamsのチャネルで共有する資料 → SharePoint
という使い分けです。
Teamsのチャネルへアップロードしたファイルも、実際にはSharePointへ保存されます。
会社として残す必要があるファイルを個人のOneDriveだけに置く運用にすると、異動や退職時の整理・引き継ぎが複雑になりやすいため注意しましょう。
Microsoft 365のプラン自体を選定中の場合は、Microsoft 365 Businessプランを比較|Basic・Standard・Premiumの違いと選び方も確認してください。
Google Driveが向く会社
Google Driveは、次のような会社と相性がよいサービスです。
- Google Workspaceを利用している
- Gmailを業務メールとして利用している
- Googleドキュメントやスプレッドシートを共同編集する
- ブラウザ中心で仕事を進めている
Google Driveでも、個人用とチーム用を分けて考えることが重要です。
マイドライブは個人を中心としたファイル保存領域です。
一方、共有ドライブではファイルが個人ではなくチーム・組織側に属します。
そのため、部署の資料やマニュアルなど、担当者が変わっても会社に残す必要があるファイルは共有ドライブで管理する方が向いています。
たとえば、
- 個人の下書き → マイドライブ
- 部署の共有資料 → 共有ドライブ
- プロジェクトメンバー全員が編集する資料 → 共有ドライブ
という使い分けです。
共有ドライブでは、メンバーが退職・異動してもファイル自体は共有ドライブに残ります。
Google Workspaceのプラン選びについては、Google Workspace Businessプランを比較|Starter・Standard・Plusの違いと選び方で整理しています。
Boxが向く会社
Boxは、Microsoft 365やGoogle Workspaceに付属するストレージというより、会社のコンテンツを管理・共有するための独立したプラットフォームとして検討しやすいサービスです。
次のような会社では候補になります。
- 取引先や顧客とのファイル共有が多い
- 外部共有の設定を細かく管理したい
- 複数の業務システムと連携したい
- ファイルへのアクセス権を細かく分けたい
- 情報管理や監査の要件が比較的厳しい
Boxでは、複数段階のアクセス権限や、共有リンクの有効期限・パスワードなどを設定できます。
そのため、
「社外へ共有できるが、誰でも自由に公開できる状態にはしたくない」
という運用では比較対象になりやすいサービスです。
ただし、「Boxなら必ず他サービスより安全」と考えるのは適切ではありません。
高度なセキュリティ、情報分類、DLP、ガバナンス機能などは契約プランや追加機能によって変わります。
自社で必要な管理機能がどのプランに含まれているかまで確認して選びましょう。
また、Microsoft 365やGoogle Workspaceとは異なり、Officeスイートやメール環境そのものを置き換えるサービスではありません。
すでにMicrosoft 365を契約している会社がBoxも導入すると、ライセンス費用と管理対象が増える点も考慮する必要があります。
Dropboxが向く会社
Dropboxは、ファイルやフォルダをパソコンとクラウドで同期しながら利用するスタイルと相性のよいサービスです。
次のような会社では候補になります。
- ローカルフォルダに近い感覚でファイルを扱いたい
- 特定のOffice環境だけに依存せずファイル共有したい
- 社外とのファイル共有がある
- 画像・動画・制作データなどを扱うことが多い
法人向けのDropboxでは、チームメンバーの管理や外部共有の制御、管理者向けのアクティビティ確認なども利用できます。
共有リンクについても、対応プランではパスワードや有効期限、ダウンロード制限などを設定できます。
また、管理者は外部へ共有されているファイルやフォルダをレポートで確認できる場合があります。
一方で、利用できる監査・管理機能の範囲はプランによって異なります。
「Dropboxは操作が簡単そう」という理由だけではなく、管理者側で必要な統制までできるか確認して選びましょう。
容量だけで選ばない
クラウドストレージを比較すると、ストレージ容量と月額料金に目が行きやすくなります。
もちろん容量は重要です。
しかし、実際の運用では次のような点も大きく影響します。
- 誰が社外共有できるか
- 誰が閲覧・編集できるか
- 異動・退職時にファイルをどう引き継ぐか
- 誰がどのファイルを共有したか確認できるか
- 既存のMicrosoft 365やGoogle Workspaceと連携できるか
- 管理者がどこまで一括管理できるか
容量不足なら上位プランへの変更や追加容量などで対応できる場合があります。
一方、ファイルの置き場所や共有ルールが会社全体で定着したあとにサービス自体を変更すると、大規模な移行作業が必要になることがあります。
そのため、容量だけではなく「このサービスを社内でどう運用するか」まで考えて選ぶことが重要です。
社内共有と社外共有は分けて考える
クラウドストレージでは、社内共有と社外共有を同じルールで考えない方が安全です。
社内共有
社内では、
- 部署
- プロジェクト
- 役職
- 業務内容
などに応じて、閲覧・編集できる範囲を決めます。
OneDriveだけに共有ファイルを集めるのではなくSharePointを利用したり、Google Driveでも共有ドライブを利用したりするのは、このためです。
社外共有
取引先や顧客とファイルを共有する場合は、さらに慎重な管理が必要です。
確認したいのは、
- 誰でも開けるリンクになっていないか
- 特定の相手だけに限定できるか
- 閲覧のみ・編集可を分けられるか
- ダウンロードを制限できるか
- 有効期限を設定できるか
- 外部共有自体を管理者が制限できるか
といった点です。
ただし、利用できる共有設定はサービスだけでなく契約プランや管理者設定によっても変わります。
「○○なら必ずパスワード付きリンクが使える」といった単純な比較ではなく、実際に契約するプランで確認してください。
メールへパスワード付きZIPを添付し、別メールでパスワードを送るような運用から移行する目的でクラウドストレージを導入する場合も、外部共有リンクを会社としてどこまで制御できるかを重要な比較項目にしましょう。
権限管理・監査ログ・DLPはプランまで確認する
法人向けクラウドストレージを比較するときは、管理者向け機能も確認します。
主な用語を整理すると、次のとおりです。
権限管理
誰がファイルを閲覧・編集・共有できるかを設定する仕組みです。
監査ログ・アクティビティログ
誰がいつ共有設定を変更したか、ファイルへアクセスしたかなどを確認するための記録です。
DLP(データ損失防止)
個人情報や機密情報などを検知し、外部共有などを制御するための仕組みです。
注意したいのは、「法人向けプランならすべて同じように利用できる」わけではないことです。
たとえばMicrosoft 365では、SharePoint・OneDriveを対象にしたMicrosoft Purview DLPを利用できるライセンスが決められています。
Google Workspaceでも、BusinessプランとEnterpriseプランでは利用できる高度なセキュリティ・DLP機能が異なります。
BoxやDropboxも、詳細な監査、情報分類、高度なセキュリティ機能などはプランによって変わります。
そのため、選定時は単に、
「監査ログ:あり」
とだけ確認するのではなく、
「自社が契約しようとしているプランで、どこまで確認・制御できるのか」
まで見ることが重要です。
Microsoft 365やGoogle Workspaceをすでに使っているなら既存環境から考える
すでにMicrosoft 365またはGoogle Workspaceを契約している場合は、まず既存環境を使えないか確認しましょう。
Microsoft 365を利用している
まずOneDrive・SharePointを検討します。
Word・Excel・Teamsなどと同じMicrosoftアカウントで管理できるため、別のクラウドストレージを追加するより管理対象を増やさずに済む可能性があります。
Google Workspaceを利用している
まずGoogle Drive・共有ドライブを検討します。
GmailやGoogleドキュメント、スプレッドシートなどと同じアカウント・管理コンソールで扱えます。
BoxやDropboxを追加するケース
既存サービスだけでは、
- 外部共有の管理要件を満たせない
- 必要な業務システムとの連携が難しい
- 特定のファイル運用要件がある
など、明確な理由がある場合に追加サービスを比較します。
目的が曖昧なまま複数サービスを導入すると、
「部署AはSharePoint、部署BはBox、個人ではDropbox」
というように保存先が分散し、IT担当の管理負荷が増える可能性があります。
Microsoft 365とGoogle Workspaceのどちらを業務基盤にするか決まっていない場合は、Microsoft 365とGoogle Workspaceを比較|中小企業はどっちを選ぶ?から確認してください。
ファイルサーバーやNASから移行するときの注意点
既存のファイルサーバーやNASからクラウドストレージへ移行する場合は、単純に全ファイルをコピーすれば終わりではありません。
事前に次の点を整理します。
フォルダ構成と権限
既存ファイルサーバーの構造をそのままクラウドへ持ち込むと、必要以上に複雑になることがあります。
SharePointならサイトやドキュメントライブラリ、Google Workspaceなら共有ドライブなど、新しいサービスの管理単位に合わせて設計し直します。
不要ファイル
長年運用したファイルサーバーには、
- 重複ファイル
- 古いバックアップ
- 退職者の個人フォルダ
- 使われていない資料
などが残っていることがあります。
移行前にある程度整理した方が、新しい環境をシンプルに始められます。
ファイル名・ファイルサイズ・データ量
クラウドサービスには、
- 1ファイルあたりの上限
- ファイル名やパスの制限
- 1日に転送できる量
- 一度に処理できるファイル数
などの制限が設定されている場合があります。
大量のファイルを移行する場合は、契約するサービスの最新仕様を確認してから移行スケジュールを決めましょう。
切り替え方法
移行中に、
「旧ファイルサーバーにも新規ファイルが追加される」
状態になると、新旧どちらが最新版か分からなくなる可能性があります。
- いつからクラウドを正式運用するか
- 旧サーバーをいつ読み取り専用にするか
- 社員へいつ周知するか
まで決めておくと切り替えやすくなります。
クラウドストレージとバックアップは別に考える
OneDrive、Google Drive、Box、Dropboxには、削除済みファイルの復元やバージョン履歴など、データを戻すための機能があります。
ただし、クラウドストレージへ保存しただけで会社のバックアップ設計が完了したとは考えない方が安全です。
たとえば、
- 誤削除
- アカウント乗っ取り
- ランサムウェア
- 管理者の設定ミス
- 必要な保存期間を超えた削除
などに備えるには、自社で「何を、どの期間、どの方法で復元できる状態にするか」を別途決める必要があります。
バックアップの考え方については、会社のデータバックアップ方法|初心者IT担当が最初に決める保存先と運用ルールで整理しています。
自社に合うクラウドストレージの選び方
最後に、判断の流れをまとめます。
| 自社の状況 | 最初に検討したいサービス |
|---|---|
| Microsoft 365を利用している | OneDrive / SharePoint |
| Google Workspaceを利用している | Google Drive / 共有ドライブ |
| 社外共有や細かなコンテンツ管理を重視 | Box |
| ファイル同期・共有を中心に比較したい | Dropbox |
ただし、この表だけで決定する必要はありません。
実際には、次の順番で考えると選びやすくなります。
- すでにMicrosoft 365かGoogle Workspaceを利用しているか
- 社内共有だけでなく社外共有をどの程度行うか
- 退職・異動後も残すファイルをどう管理するか
- 必要な権限・監査・セキュリティ機能が契約プランに含まれているか
- 新しいサービスを増やす管理コストに見合うメリットがあるか
すでにMicrosoft 365やGoogle Workspaceで要件を満たせるなら、無理に別サービスを追加する必要はありません。
逆に、既存環境では満たせない要件が明確なら、BoxやDropboxを含めて比較する価値があります。
重要なのは「どのサービスが一番優れているか」ではなく、自社のファイル共有ルールを無理なく運用できるサービスを選ぶことです。