「Wi-Fiにつながりません」——そう言われたとき、とりあえずルーターやアクセスポイントを再起動したくなるかもしれません。
しかし、複数人が同じ機器を使っている会社のネットワークでは、安易な再起動によって、正常に使えていた社員の通信まで止めてしまうことがあります。
大切なのは、再起動する前に「誰が・どこで・どこまでつながらないのか」を確認し、原因の範囲を絞ることです。
この記事では、会社でWi-Fiトラブルが発生したときに、初心者IT担当でも上から順番に確認できるよう、切り分けの流れを整理します。
まず「どの端末で、どこまでつながらないか」を確認する
具体的な対応に入る前に、まず次の4点を確認します。
- 1台だけか、複数台か
- 特定の場所だけか、会社全体か
- Wi-FiのSSIDが見えるか
- Wi-Fiには接続できているが、インターネットが使えないのか
ここを確認するだけでも、次に調べる場所をかなり絞れます。
1台だけか、複数台か
1台だけで発生しているなら、そのPCやスマートフォン固有の設定・認証・無線機能などが原因の可能性があります。
一方、同じタイミングで複数台が使えなくなっているなら、アクセスポイントやルーター、回線など、複数の端末に共通する部分を疑います。
特定の場所だけか、会社全体か
「会議室だけ」「フロアの端だけ」といった特定の場所で発生している場合は、電波状況や、その場所を担当するアクセスポイントの問題が考えられます。
会社全体で使えない場合は、より上流のネットワーク機器やインターネット回線まで確認範囲を広げます。
SSIDが見えるか
SSIDとは、Wi-Fiへ接続するときに一覧へ表示されるネットワーク名です。
普段使っているSSIDが見えない場合は、アクセスポイントの停止、電波が届いていない、設定変更などが考えられます。
SSIDは見えているのに接続できない場合は、パスワードや認証、端末側の接続情報など、別の原因を疑います。
Wi-Fiには接続済みか
Wi-Fiのアイコンは正常なのにWebサイトが開けない場合、「Wi-Fiへ接続するところ」までは成功している可能性があります。
この場合は、IPアドレスやデフォルトゲートウェイ、DNS、インターネット回線など、その先の通信経路を確認します。
1台だけWi-Fiにつながらない場合
特定の1台だけで発生している場合は、まず端末側を確認します。
Wi-Fiが有効になっているか
設定画面を開き、Wi-Fi機能そのものがオフになっていないか確認します。
ノートPCでは、キーボード操作などで意図せず無線機能が無効になっていることもあります。
機内モードになっていないか
機内モードが有効になっていないか確認します。
機内モードの状態によっては無線通信が制限されるため、Wi-Fiの設定とあわせて確認します。
正しいSSIDを選んでいるか
会社によっては、社員用、ゲスト用、機器用など複数のSSIDがあります。
似た名前のネットワークへ接続しようとしていないか確認してください。
一度切断して再接続する
SSIDは正しいのに接続できない場合、一度Wi-Fiを切断し、再度接続してみます。
保存されている接続情報に問題がある場合は、ネットワーク設定から対象SSIDの登録を削除し、あらためて接続する方法もあります。
ただし、パスワードや認証方式が分からないまま削除すると再接続できなくなるため、必要な接続情報を確認してから行ってください。
端末を再起動する
ここまで確認しても改善しない場合は、対象となっているPCやスマートフォンを再起動します。
1台だけの再起動であれば、共有しているネットワーク機器を再起動するより業務への影響を抑えられます。
他のWi-Fiへ接続できるか
可能であれば、別の利用可能なWi-Fiへ接続できるか確認します。
別のWi-Fiには接続できるのであれば、無線機能そのものより、社内Wi-Fiの認証や設定との組み合わせに原因がある可能性が高まります。
どのWi-Fiにも接続できない場合は、端末側の設定や無線LANアダプターなどを確認する必要があります。
複数台が同時につながらない場合
複数の端末で同時に問題が起きている場合は、端末を1台ずつ直すのではなく、共通部分を確認します。
アクセスポイントやルーターの状態を確認する
アクセスポイントは、社内でWi-Fiの電波を提供する機器です。
機器の電源ランプやステータスランプを確認し、消灯している、警告表示になっているなど、普段と明らかに違う状態になっていないか確認します。
通常時の表示が分からない場合は、ランプだけで故障と断定せず、機種のマニュアルや管理資料も確認します。
回線障害が発生していないか確認する
Wi-Fiだけでなく、有線LANの端末でもインターネットへ接続できない場合は、インターネット回線側の障害も考えられます。
契約している回線事業者やプロバイダーの公式障害情報を確認してください。
電源やLANケーブルを確認する
アクセスポイントやルーターにつながっている電源ケーブル、LANケーブルが抜けたり緩んだりしていないか目視で確認します。
ただし、構成が分からないケーブルをむやみに抜き差しするのは避けます。
周囲の人にも確認する
同じフロアや近くの席の人に、
- 同じSSIDを使っているか
- 同じ症状が出ているか
- いつから発生したか
を確認します。
影響範囲が分かると、端末固有なのか、特定アクセスポイントなのか、会社全体なのかを判断しやすくなります。
むやみにネットワーク機器を再起動しない
アクセスポイントやルーターは複数人で共有する機器です。
再起動すると、その機器を利用している社員の通信が一時的に切断されます。
原因が分からないまま「とりあえず再起動」するのではなく、影響範囲と現在の状態を確認し、必要であればベンダーやネットワーク管理者と相談したうえで実施します。
Wi-Fiにはつながるがインターネットが使えない場合
Wi-Fiへの接続自体は成功しているのにインターネットが使えない場合は、端末から先の通信経路を確認します。
IPアドレスを取得できているか
Windowsでは、コマンドプロンプトで次のコマンドを実行するとIPアドレスなどを確認できます。
ipconfig
会社で通常使っているIPアドレスではなく、169.254.x.x のようなアドレスになっている場合、Windows端末がDHCPサーバーから正常なIPアドレスを取得できず、自動的にIPアドレスを設定している可能性があります。
この場合は、DHCPやアクセスポイント、その先のネットワークとの通信を確認する必要があります。
デフォルトゲートウェイを確認する
デフォルトゲートウェイは、端末から別のネットワークへ通信するときの出口になる機器です。
ipconfig でデフォルトゲートウェイが設定されているか確認します。
社内で確認手順が決められている場合は、デフォルトゲートウェイへ通信できるかも確認します。
DNSの問題か確認する
DNSは、Webサイトの名前を通信先のIPアドレスへ変換する仕組みです。
インターネットへの通信そのものはできるのに、Webサイト名を指定したときだけアクセスできない場合は、DNSに問題がある可能性があります。
pingで簡単に確認する
ping は、指定した通信先から応答が返ってくるかを確認できるコマンドです。
たとえばデフォルトゲートウェイへpingを実行すると、端末から社内ネットワークの出口付近まで通信できているかを確認する材料になります。
ただし、ネットワーク機器やセキュリティ設定によってはpingへの応答を禁止していることがあります。
pingに応答しないことだけで「ネットワーク障害」と断定しないことが重要です。
IPアドレス、デフォルトゲートウェイ、DNSなども含めて社内ネットワーク全体を詳しく切り分けたい場合は、社内ネットワークにつながらないときの切り分け方も参照してください。
特定の場所だけWi-Fiが弱い・切れる場合
「接続はできるものの、会議室だけ遅い」「特定の席では頻繁に切れる」といった場合は、電波環境を確認します。
電波強度を確認する
端末に表示されるWi-Fiの電波状態を確認します。
同じ端末を持って場所を移動したときに症状が改善するのであれば、端末そのものより、その場所の電波環境に原因がある可能性が高まります。
アクセスポイントとの距離や障害物を確認する
アクセスポイントから離れるほど電波は弱くなります。
壁や扉、什器などの障害物によっても電波状況は変わります。
使用している周波数帯を確認する
Wi-Fiでは主に2.4GHz帯と5GHz帯が使われ、対応機器では6GHz帯も利用されます。
一般的に、
- 2.4GHz:比較的遠くまで届きやすいが、混雑や干渉が起きやすい
- 5GHz:2.4GHzより混雑しにくいが、壁などの影響を受けやすく、届く範囲が狭くなりやすい
- 6GHz:対応機器が必要で、混雑しにくい一方、距離や障害物の影響を受けやすい
という違いがあります。
ただし、会社のWi-Fiではアクセスポイント側が接続先の周波数帯を自動制御している場合もあります。管理方法が分からない状態で設定を変更するのではなく、まず現在の接続状況を確認します。
混雑や電波干渉を確認する
接続台数が多い時間帯だけ遅くなる場合は、アクセスポイントの処理能力や電波の混雑が関係している可能性があります。
2.4GHz帯では、Bluetooth機器や電子レンジなど、同じ周波数帯を利用する機器の影響を受けることもあります。
アクセスポイントの配置を確認する
特定の場所で継続的に問題が起きる場合は、その場所をカバーするアクセスポイントの位置や台数が適切でない可能性もあります。
その場で応急処置だけを繰り返すのではなく、
- 発生場所
- 発生時間
- 利用人数
- 電波状況
- 使用していたSSID
などを記録し、恒常的な改善が必要か判断します。
IT担当がベンダーへ連絡するときに伝える情報
自分の権限や知識だけでは解決できない場合は、無理に設定を変更せず、ネットワーク管理者や保守ベンダーへ連絡します。
その際は、次の情報をまとめておくと調査が進みやすくなります。
- 発生した時刻
- 影響を受けている人数・端末数
- 発生している場所
- 接続している、または接続しようとしているSSID
- Wi-Fi自体に接続できないのか、インターネットだけ使えないのか
- 画面に表示されたエラーメッセージ
- IPアドレスなど確認できた情報
- ここまでに実施した確認内容と結果
「たぶんルーターが壊れています」のような推測より、
「3階の5台で同じ症状があり、SSIDは表示されるが接続できない」
のように、確認できた事実を伝える方が調査に役立ちます。
まとめ
会社のWi-Fiトラブルでは、いきなりルーターやアクセスポイントを再起動するのではなく、まず影響範囲を確認することが重要です。
最初に、
- 1台だけか、複数台か
- 特定の場所だけか、会社全体か
- SSIDは見えるか
- Wi-Fi自体に接続できないのか、インターネットだけ使えないのか
を確認します。
1台だけなら端末側、複数台なら共通するネットワーク機器、特定の場所だけなら電波環境というように、確認する順番を決めれば、闇雲に設定を変更する必要はありません。
自分で判断できない範囲まで来たら、確認した事実を整理してベンダーやネットワーク管理者へ引き継ぎましょう。